ビジネスにおいて、かならずしも物事の正解が決まっているとはかぎりません。
時には不確定な物事にたいして推論する必要があります。
この時に使われる方法は大きく分けて2つ、「演繹法」と「帰納法」です。
演繹法とは、ある普遍的な事実から特殊な事例にたいする結論を得るものです。例としては以下のようなものがあります。これは「三段論法」とも呼ばれているものです。
1)人間はかならず死ぬ
2)私は人間だ
3)よって、私はかならず死ぬ
もし前提となる普遍的な事実が正しいなら、以降の論理もかならず正しくなります。このことから、最後の結論はとても強い説得力を持っています。
ただし、もし前提としていた事実が誤りだとしたら、その後の論理が全て破綻します。たとえば以下はその例です。
1)ヘビはかならず毒を持っている
2)アオダイショウはヘビだ
3)よって、アオダイショウは毒を持っている
実際には、アオダイショウは毒を持っていません。このような論理の破綻は、「ヘビが毒を持っている」という間違った前提を持ち出したことが原因です。
前提にかぎらず、どこか一箇所だけでも矛盾していると全てが破綻してしまいます。そのため、論理を組み立てるのに時間が掛かるという点もデメリットだと考えられます。
自分では「論理的だ」と思っていても、周囲から見れば「そもそもの前提がおかしい」「偏見が入っている」ということもよくあります。演繹法を使う時は、感情的な主張になっていないかをよく注意する必要があります。
帰納法は演繹法とは逆の方法。特殊な事例からある普遍的な事実を導き出すものです。例としては以下のとおりです。
1)人間であるAさんが死んだ
2)人間であるBさんが死んだ
3)よって、人間はかならず死ぬ
実際の事例から普遍的な真実を導き出すということは、科学の進歩でとても重要なことです。物理学者のガリレオ・ガリレイも、ものが落ちる様子を何度も観察して万有引力の法則を導き出したと言われています。
しかし、帰納法で導き出した結論はかならずしも正しいとはかぎりません。以下はその一例です。
1)果物であるリンゴは赤い
2)果物であるサクランボは赤い
3)よって、果物はかならず赤い
オレンジやバナナなど、赤くない果物はたくさんあります。これは、リンゴとサクランボというごく一部のサンプルのみで結論を導き出してしまったことが原因です。
このことから、帰納法は演繹法とくらべると説得力に欠ける部分があるとされています。この部分をしっかりと補完するためにも、サンプルを増やす、別の論理で補強するなどの手段を合わせて使いたいところです。
物事を推論する時に使われる「演繹法」「帰納法」という2つの方法。これらに優劣はありません。演繹法だからこそ説得力のある主張を立てられることがありますし、帰納法だからこそ多くの方が気付き得なかった普遍的な真実に気付けることもあります。
双方の特性を十分に理解して、ケース・バイ・ケースで使い分けていくことが大切です。