海外への留学や就職、赴任などにたいして消極的な「内向き志向」は、今の若者にとても多いと言われています。
しかし、この主張は「社会状況を考えていない」など、多くの異論が唱えられています。
内向きか否かを議論する時にもっとも多く取り上げられる話題が留学です。文部省のデータによると、留学者数は2004年頃をピークに減少傾向にありました。しかし、2010年以降徐々に回復しており、今では当時の人数を越えています。
また、近年は少子化も問題になっています。文部科学省などのデータによると、高等学校や大学の学生数は2000年以降僅かに減少、もしくは横ばいの状態が続いています。絶対数ではなく割合で考えれば、むしろ今の若者は「外向き志向」だとも考えられます。
そもそも、内向き説は特にアメリカへの留学者数が減ったことを根拠に論じられることが多いようです。しかし、プログラムの多様化によってヨーロッパやアジアなど行き先が分散されていることを考えると、とても説得力のある主張とは言えません。
留学者数はけっして減ってはいないものの、多くの方が若者にたいして「内向き志向では」と感じています。
実際に「海外に興味がない」と答える人は少なくありません。
しかし、それはけっして彼らの考え方によるものだけではありません。主に以下のような原因が挙げられます。
日本は少子化が進む一方で、大学の数が増え続けています。また、外国人教授が増える、英語授業がカリキュラムに含まれるなどの国際化も進んでいます。国内で学べる幅が十分に広いのですから、「わざわざ海外に行く必要がない」と考えることも当然でしょう。
近年はインターネットが普及しており、海外の情報を気軽に入手できます。経験に勝るものはないと言っても、ほとんど知識がない状態から始めるかつての留学とくらべれば、やはりメリットは薄くなってしまうでしょう。
特に大学生の場合はデメリットにもなり得ます。就職活動で企業がほとんど評価してくれないどころか、就活スケジュールが前倒しになっていることで逆に不利になってしまうためです。
留学するにあたってもっとも大きな問題がお金です。リーマンショック以降、大学の学費は高騰しています。公立でも年間100万円以上、私立ならその数倍です。さらに所得も減少していることから、この支払いは相当負担が掛かるものだと分かるはずです。
大学生のほとんどが奨学金などのローンを抱えているはず。さらに借金を増やしてまで海外に行くということは、生徒だけでなく保護者もできるだけ避けたいことです。
「内向き」とは国際感覚の鈍化を批判する言葉です。しかし、実際には今の若者には適用されません。数値で見ればけっして消極的になっていないこと、国内でも十分な環境が整っていること、現代社会が海外留学にたいして冷たいことなどが根拠になります。