今更きけない。移転価格税制とは

グローバルに展開している企業に関わる言葉として「移転価格税制」というものがあります。

これを知らないと、多大な税金を払うことになって企業が大ダメージを負うことがあります。

価格次第で収める税金を少なくできそうな「移転価格」の例

まず移転価格とは、子会社などのグループ内の取引価格のことを言います。

日本の親会社が海外の子会社に製品を販売する場合、身内同士ですから好きな価格で取引ができるように見えます。しかし、それぞれの国で税金を収めることを考えると、上手いやり口が見えてきます。

たとえば、親会社がコスト1,000掛かる製品を子会社に価格1,200で売ります。これで、親会社の利益は200です。そして、子会社がその製品を顧客に2,000で売った場合、子会社の利益は800。合計すると1,000の利益が生まれます。

同じコストの製品を、親会社が子会社に価格1,500で売り、子会社が顧客に2,000で売ってみます。利益は500プラス500で、これもトータルの利益は1,000です。これら2つは、どちらも差がないように見えます。

しかし、ここに税が絡むと大きく変わります。たとえば親会社がある日本では売り上げの10%を税金として払わなければならず、子会社がある海外では20%だとします。

すると、前者は20プラス160で合計180が徴収され、後者は50プラス100で合計150が徴収されることに。結果的に、後者の方法を取ったほうがグループに残る利益が多いことになります。

納税額を適正にするために生まれた「移転価格税制」

上記のように取引を工夫すれば、税金をほとんど収めることなく多大な利益を得られそうです。しかし、これは不適正な取引。そこで生まれたものが「移転価格税制」。上記のような関連企業との取引を、独立した第三者とした価格で計算し直すというものです。

たとえば上記前者の例では、子会社が顧客にたいして2,000の価格で製品を売っています。そのため、親会社から子会社にたいしても価格2,000で売ったと見なします。そのため、親会社の利益は200ではなく1,000ということになり、徴収すべき税金は100です。

余分に税金を支払って大きな負担が掛かる恐れアリ

このような移転価格税制のもっとも大きな問題は二重課税です。たとえば、上記の例では結局、日本の親会社が100の税金を払うことになりました。

しかし、それで子会社が支払う税金が減るかというと、税務当局の対応によってはそうとはかぎらない場合があります。

つまり、移転価格税制が適用される以前の160を子会社が支払い、トータルで260が税収されてしまうことがあるというわけです。このような二重課税は企業にとってあまりに大き過ぎる負担です。

このようなリスクを避けるためにも、事前確認によって移転価格税制を行わないという申告を行う、万が一二重課税が生じたら相互協議を行うなどの対応が求められます。

勤務している会社や業種などによっては全く関わりがない語句かもしれません。しかし、グローバル社会で生きていく以上、このような言葉は知識としてぜひとも知っておきたいところです。

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