就職を少しでも有利にするために多くの大学生の方が検討するのが、資格の取得ではないでしょうか。
ただし、資格といっても難易度の低いものや実務からかけ離れたものではかえって逆効果となってしまいます。
そこで大学生が就職で有利になると考えられる10の資格を挙げてご紹介するとともに就職活動と資格取得の関係において大切なポイントについてもお伝えしていきます。
概要
まず結論からいえば、資格を取得すれば就職活動において必ず有利になるとは限りません。これは公認会計士や税理士など資格があることが就職の前提となっているような特定の業種や職種を除けば、金融機関やメーカー、小売業などのいわゆる一般事業会社への就職において資格取得はそれほど重要ではありません。
会社の採用基準として一般的に重要視されるのは、あくまで人柄であり、その人が入社した場合に活躍してくれそうなポテンシャルがあるかどうかといった点だからです。
とりわけ日本企業では多少の変化はあるものの、基本的に新卒で採用した人材に資格や即戦力があることを期待していません。むしろ、自社に入社してからOJTと呼ばれる現場での教育を通じて育てあげ、数年後から実力を発揮して会社に貢献してもらおうという考え方が根底にあります。
つまり、新卒の人材は一から会社のほうで育てるので、資格取得は絶対条件ではないという背景があるのです。
ただし、そうはいっても資格取得が就職において全く役立たないとも言いきれません。
資格取得の難易度が高いものだったり、就職しようとする業界に直結するようなものだった場合、横一線で競争となる就職活動において有利になる場合もあります。特に就活で有利になると考えられる資格をご紹介していきましょう。
経済がグローバル化している現代では、英語力があることは大きなアピールポイントになります。特に海外に幅広く展開している商社やメーカー、金融機関などではTOEICのスコアの高さは重要となっており、この傾向は文系・理系を問いません。
最高点が990点となっているTOEICですが、履歴書に書ける点数は最低600点以上で、730点以上あると高い評価が得られるとされています。
特に英語力が重視される商社や金融機関などへの就職を希望する場合、できれば800点以上は獲得しておきたいところです。英語力を測る資格としてTOEICに似たテストにTOEFLがあります。TOEFLは海外留学する場合などに学校に英語力が一定レベル以上あることを証明するために提出する試験です。
就職活動を考慮した場合、アカデミックな内容のTOEFLよりもビジネスの現場における英語でのコミュニケーション能力の測定を重視しているTOEICのほうがおすすめとなるでしょう。
「公認会計士」「税理士」「不動産鑑定士」「司法書士」といった難易度の高い国家資格はたとえ実務経験がなくても、それだけで高い評価が得られます。特に監査法人や会計事務所、不動産会社の他、あらゆる法律系のサービスを幅広く提供する総合法律事務所などを就職先として希望する場合には取得しているだけで他の学生を大きくリードすることができます。
ただし、これほどの専門性を必要としていない一般事業会社への就職を考えた場合、必ずしも有利になるとは限らない点に注意しましょう。特にこのような資格の場合、入社後に独立可能なものがほとんどなので、かえって逆効果となる場合もあります。
いわゆる簿記検定のことで、企業活動を数字の面から記録するための複式簿記となります。1級、2級、3級、初級、原価計算初級というレベル分けがされていますが、履歴書に書けるのは簿記2級からです。
就職先として金融機関や企業の経理・財務・IRなどの職種に就きたいという希望があるなら、就職活動でのアピール度という面だけでなく実務的な面からも役立ちますし、取得しておいて損はありません。
通称「宅建」と呼ばれる宅地建物取引士は、不動産取引全般に関する法律や取引慣行、土地や建物に関する評価方法などの知識が問われる資格です。宅建は不動産業界への就職を検討している場合だけでなく、不動産の担保評価が必要な銀行などの金融機関、さらに総合法律事務所への就職でもアピールできる資格といえるでしょう。
名称が「取引士」へと変更してから難易度が上がりつつあるとも言われていますが、たとえ法律の知識がなくても3ヶ月~半年ほど集中して勉強すれば取得できる資格です。関連する業界への就職を希望する場合は取得を検討してみてもいいでしょう。
USCPAはアメリカの公認会計士の資格ですが、監査法人や会計事務所、金融・会計系コンサルティングファームなどの他、海外に大きく展開する日本のグローバル企業や外資系金融機関などへの就職では十分なアピール効果が期待できます。
監査法人や会計事務所などでの外部監査だけでなく、企業の内部統制についての知識や理解のあるUSCPAの場合、企業の経理や財務、さらに内部監査人としての活躍も可能です。
特にグローバル展開している企業の内部監査人の場合、往査する子会社が海外の企業で担当者と英語でコミュニケーションを取らなければならない場合も珍しくありません。
IFRS(国際会計基準)などの会計の知識だけでなく、英語力もアピールできるUSCPAの場合、海外子会社の内部監査でも力を発揮でき、ニーズのある会社では就職面でのアピール度も高くなるでしょう。
ビジネスでは必須となる法令順守やコンプライアンスのベースとなる法律に関する基礎的な知識が問われる資格です。特に上場企業の場合では、法令順守やコンプライアンスは非常に重要であり、対応を間違えると大きな訴訟にもなりかねません。この検定を取得していれば、法律の基礎知識が備わっていることをアピールできます。1級、2級、3級とありますが、できれば2級以上を目指しましょう。
FPとは、ファイナンシャルプランナーの略称であり、顧客の投資プランの立案やライフステージに応じた資産管理などの相談業務に必要な知識や技能を検定する国家試験です。
お金や不動産など資産や保険などに関する知識を広く身につけられ、特に個人顧客への営業や相談業務の多い銀行や証券会社、生保、不動産業界などへの就職ではアピールになる資格です。1級、2級、3級とありますが、履歴書に書けるレベルは2級以上になります。
退職金・企業年金などの社会保険や労働に関連する法律や人事・労務管理などに関する相談や指導をおこなうことができる国家資格です。人事や労務関係の仕事はどの企業でも重要であり、必須ですので取得していれば大きなアピールになるでしょう。
特に一般事業会社での人事や総務の仕事の他、法律系のサービスを全般に扱う総合法律事務所やコンサルティング会社への就職でも有利になる場合があります。
正しい敬語の使い方などビジネスの現場における一般的なビジネスマナーやトラブル対応、一般知識などが問われるのが、秘書検定です。秘書業務や一般事務業務などの職種を希望する場合におすすめの資格です。
1級、準1級、2級、3級とありますが、履歴書に書けるのは筆記と面接の両方がある準1級以上のレベルからとなります。
企業のIT化が当たり前の現代では、ITに関する知識はほぼ全ての業界で求められています。ITパスポートはIT技術者としての基本的な知識が問われる国家資格で、特にIT業界への就職を希望する場合はおすすめです。IT業界以外でもITの知識が備わっている人材には一定のニーズがありますので、この資格の取得は一定のアピールポイントになるでしょう。
冒頭でもお伝えしたように資格取得は就職において絶対的に有利になるものではありません。就職活動においては、資格よりも就職したい企業やその業界についての研究と自分のアピールポイントを洗い出すための自己分析のほうがはるかに重要です。
面接では資格をいくつ取得したかよりも、人間性やポテンシャルの面でいかに自分がライバルよりも優れていると感じてもらえるかのほうがはるかに重要なのです。間違っても資格取得を目的化するのではなく、あくまで取得することで入社後にいかに自分がその会社に貢献できるかをアピールするようにしたほうがいいでしょう。
今回は就職で有利になる10の資格についてご紹介しました。しかし、資格の取得によって就職が必ず有利になるというものではなく、あくまでアピール材料の一つという意識を持っていたほうがいいでしょう。また資格を取得する場合には自分が行きたい業界との関連性なども良く検討し、無駄にならないようにしたいものです。