AIなどのテクノロジーを活用した新たな社会を実現するための仕組みとして、「ソサエティ5.0」というコンセプトが日本政府により提唱されています。
今回はこのソサエティ5.0が実現することで、私たちのこれからの社会や仕事に与える影響や変化などについてお伝えしていきます。
概要
ソサエティ5.0とは、5年ごとに改定されている科学技術基本法に基づいて2016年1月に内閣府から提唱された日本の未来社会のコンセプトのことです。
このソサエティ5.0という呼称は、これまで私たちが経験してきた「狩猟社会(Society 1.0)」、「農耕社会(Society 2.0)」、「工業社会(Society 3.0)」、「情報社会(Society 4.0)」に続く、第五番目の社会ということでこのキャッチフレーズが用いられています。
このコンセプトの中では「サイバー空間(仮想空間)」と「フィジカル空間(現実空間)」を高度に融合させ、経済の高度な発展と社会的な課題の克服の両方を実現した新たな未来社会が提唱されています。
このような社会では、AI(Artificial Intelligence:人工知能)やIoT(Internet of Technology:モノのインターネット)、ロボット、ビッグデータなどの革新技術をあらゆる産業や社会に取り入れられ、新たな価値が生まれることを念頭に置いています。
ソサエティ5.0の時代が到来すれば、「ドローン」「自動走行車」「クラウド技術利用」「AI機器」「遠隔操作ロボット」「無人ロボット」など様々なテクノロジーの活用によって私たちの社会や仕事に大きな変化を与えるものと考えられています。
そこで社会や仕事がどのように変化していくのかについて具体的な例を挙げてご紹介していきましょう。
ソサエティ5.0時代に活用されるテクノロジーによって私たちの社会には以下のような変化が起こると考えられています。
例えば、自動走行車が登場して本格的に利用されるようになれば、これまで運送業界やタクシー業界などで問題となっていたドライバーの長時間労働や人手不足、交通事故の発生などの問題が克服されることになるでしょう。
物流の世界では各家庭内に設置されるAIによって、必要な日常の消耗品や食料が瞬時に発注され、ドローンや自動運転車両によって届けられます。
さらに医療の分野では、IoTとAI、ビックデータを駆使することで医師の往診の必要性を抑えることにつながります。
そのため通院の回数を減らすことができ、特に交通の便が悪いエリアに住んでいる高齢者の方にとってはメリットが大きいと言えるかもしれません。
ソサエティ5.0で提唱される社会が実現すると私たちの仕事の領域においても大きな変化が訪れるでしょう。
例えば、事務処理など定型化できる作業は、「RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション」の発展によってソフトウェア型ロボットが自動で正確に処理してくれるようになります。
また、商品の生産分野でも顧客からの注文をAIで集中管理し、さらにビッグデータを活かしながら生産ロスのない効率的な生産管理が可能になるでしょう。
さらに現在よりも効率的な産業用ロボットの登場とAIの活用で完全な無人工場での生産も可能になるかもしれません。
さらにこれまで危険とされていた鉄塔や高層ビルのメンテナンスなどには遠隔操作によるロボットが活躍し、人の事故を大幅に減らせることも期待されています。
ソサエティ5.0が提唱されている理由としては、日本が抱えている課題の克服があります。日本では、世界最速で進んでいる「少子高齢化」や他の先進国と比べた場合の「生産性の低さ」などの問題があります。
また、その他にも「地方の過疎化」や「貧富の拡大」といった問題もあります。IoTやAI、自動走行、ロボット技術などの活用によってソサエティ5.0で目指している社会を実現することでこういった課題の克服を目標としているのです。
既にAIの活用などは始まっているものの、より本格的にソサエティ5.0時代になれば私たちの働き方にも大きな影響を及ぼすことになるでしょう。
一番の違いはAIやロボット、ビッグデータといったテクノロジーの利用によって、肉体労働や事務労働など比較的単純な仕事の多くが無くなっていくことです。
反対にソサエティ5.0時代における働き方の中心になると考えられるのが、テクノロジーでは代替が難しい分野です。
例えば、創造性が必要な「クリエイティブ系」や経営・管理に関わる「マネジメント系」、さらに人に癒しを与えるような「ホスピタリティ系」の仕事などが挙げられます。つまり、人間でないと難しい新たな価値を生み出すような仕事が働き方の中心となってくる可能性が高いということです。
今回の記事ではソサエティ5.0の意味合いとソサエティ5.0時代到来によって社会上の課題がどのように克服され、私たちの社会や仕事に与えると考えられる変化についてお伝えしてきました。
ソサエティ5.0時代になると仕事のやり方や仕事そのものに大きな変化が起こり、中には無くなってしまう仕事もあるでしょう。
しかし、そうした変化を恐れるのではなく、むしろチャンスと捉えてこれからの時代にふさわしい働き方やキャリアを志向していきたいものです。