ビジネスにおいて、かならずしも「技術があれば成功する」とはかぎりません。
商品を開発するための予算が足りない、販売しても誰も見向きしてくれなかったなど、さまざまなことが起こり得ます。
このような困難をクリアしてこそ、一流のビジネスパーソンです。映画「ララランド」で有名なデイミアン・チャゼル監督も、このような困難を上手に乗り越えてきた実力者の1人です。
「ララランド」は2016年にアメリカで公開された映画。ピアニストの恋愛模様を描いた作品であり、ミュージカル調でありながらコメディ色もあります。
3,000万ドルの製作予算で、興行収入は10倍以上の3億7000万ドルにも及び、「2016年最高の映画」として高い評価を得ました。アカデミー賞やハリウッド映画賞など、合計で30近い賞も獲得しており、特に前者は歴代最多のノミネートを達成しています。
そんなララランドを生み出した監督はデイミアン・チャゼル氏。ハーバード大学で映画製作を学んでおり、2009年に「Guy and Madeline on a Park Bench」でデビューします。
その後雇われの脚本家として脚本を執筆し、2014年の短編映画「セッション」でいくつもの賞を獲得し成功。その後2016年のララランドで、ついに2年前を超える大成功を収めることになりました。
ララランドという大作を生み出すきっかけになったものが、前作でもある「セッション」です。
当時彼はそこまで有名な人物というわけではなく、出資してもらえる人がいない予算難の状態でした。セッションは、そのような状況における資金稼ぎの目的で作られた作品です。
また、この短編映画の作成にこぎつけたこと自体、今まで書いた脚本がブラックリストに載ったことが要因になっています。これは映画化されていないが特に優れている脚本をまとめたリストのことです。
彼の業績は、まさに「千里の道も一歩から」ということわざのとおりです。予算がなくても、少しずつ成果を上げて、ついには大きな成功へとたどり着きました。
ララランド自体が成功した秘訣は、高い技術力がある他、ターゲットが明確だったという点にあります。
この作品のターゲットは「昔はよかった」と嘆くような人々。過去やある時代ばかりを理想化する人々に、クラシック映画を使って「現代」を届けるというメッセージがこめられています。日本でも、ララランドにハマる方は圧倒的に30代以上の男性が多数です。
映画にかぎらず、「万人ウケ」とはもっともウケない言葉です。デイミアン・チャゼル監督が明確なターゲットとメッセージを持っていたからこそ、アカデミー賞最多ノミネートという大きな偉業も成し遂げられたのでしょう。
ビジネスの場は、「技術力さえあれば儲かる」という簡単なものではありません。デイミアン・チャゼル監督から学び取れるのは、予算が少なくても小さな成功を積み重ねていくべきということと、明確なターゲットとメッセージを持つということの2つです。