米国公認会計士(USCPA)を受験してみようと検討中の方は、日本人の合格率や受験者数などは気になるところでしょう。
そこで、実際の数値を挙げて実態についてお伝えしていきます。
概要
米国公認会計士とは、アメリカの各州で認定されている公認会計士資格のことです。
試験問題はAICPA(米国公認会計士協会)によって作成され、試験の申込や合格などの管理についてはNASBA(全米州政府会計委員会)で管理されています。
試験そのものは全州共通のため、ライセンスの価値に州による違いはありません。ただし、会計士のライセンス発行は各州のルールによって決められており、ライセンス取得に必要な要件などは州によって異なります。
試験に合格するとCertificate(サーティフィケート)と呼ばれる資格証明書のようなものを取得できます。
また、各州で発行されるLicense(ライセンス)登録をおこなうことで、はじめて「USCPA(米国公認会計士)」と名乗ることができ、名刺にも記載可能となります。
試験ですが、以下の表にあるように4つの試験科目(FAR・BEC・AUD・REG)から構成されています。1科目ずつの受験が可能な科目合格制度となっており、各科目とも75点以上で合格です。科目合格の場合、有効期限は18カ月となり、その期間内に4科目全てに合格できないと失効して、再受験が必要になります。
科目名 | 試験内容 |
FAR | Financial Accounting & Reporting(財務会計)
・IFRS(国際会計基準)を含めた企業会計と公会計(政府・非営利組織会計) |
BEC | Business Environment & Concepts(企業経営環境・経営概念)
・コーポレートガバナンス・経済学概論・IT概論・管理会計(原価計算含む)、等 |
REG | Regulation(諸法規)
・連邦税法とビジネス法 |
AUD | Auditing & Attestation(監査および諸手続き)
・監査と証明業務、会計士としての責任 |
試験の形式は、以下の3タイプがありますが、最後のWC問題(論述問題)があるのはBECだけとなっています。
・MC問題(Multiple Choice、4択問題)
・TBS問題(Task Based Simulation、応用問題)
・WC問題(Written Communication、論述問題)
受験勉強に必要な時間数は、日本の公認会計士が約4,000時間以上とされているのに対して、米国公認会計士(USCPA)の場合は約1000時間とされています。
これは会計の知識や実務経験などによっても個人差がありますが、日本の公認会計士よりもはるかに短い勉強時間で合格できる試験です。
試験はアメリカ国内の他、日本国内(東京・大阪)でも受験可能です。試験は日本の公認会計士や税理士などと異なり、2004年4月から全てコンピュータ化され、1年中ほぼ毎月オンラインでの申込が可能ですので、サラリーマンの方でも無理なく受験できます。
それでは次にUSCPAの合格率(科目別・全科目)と合格者数をご紹介していきます。
日本人の科目別の合格率については、直近の入手可能なデータ(NASBA(全米州政府会計委員会)発表)が現行では2015年と古いものしかありませんが、概ね合格率は直近データ(2018年のもの)と大差がないために参考になるでしょう。
科目名 | 2015年度
(日本人のみ) |
2015年度
(全受験生) |
2018年度
(全受験生) |
AUD | 28.5% | 47.3% | 46.2% |
BEC | 33.9% | 56.5% | 59.4% |
FAR | 42.6% | 46.8% | 53.2% |
REG | 42.7% | 49.4% | 51.0% |
これによれば、試験が英語で出題されることもあり、日本人受験生の各科目の合格率は全体のそれよりも若干低い傾向にあります。
特に実務的な出題が多く、監査業務の経験がないと論点がイメージしづらいAUD(監査)、や広範囲な知識が問われるBEC(企業経営環境・経営概念)では日本人の合格率は全体より大きく下がる傾向があります。
試験対策ではその辺りを意識した対策が必要になってくるでしょう。
NASBA(全米州政府会計委員会)公表の2017年度における日本人の全4科目平均合格率は「34.6%」です。
この年の日本人総受験者数が2,041名でしたので、700名の合格者となっています。尚、上記の全4科目合格率はあくまで科目ごとの平均です。
先ほどご紹介した上の表(2015年度データ)にあるように比較的合格率の高いFAR(財務会計)や(諸法規)で40%超、AUD(監査)やBEC(企業経営環境・経営概念)で20%後半から30%前半となります。
もちろん、年度によって合格率は変わりますが、おおよそ同じような傾向が見られます。
NASBA(全米州政府会計委員会)公表の2014年度のデータによれば、その年のUSCPA受験者数約91,000人に対して、全科目の合格者数は約26,000人でした。これに対して、日本人の同年度の受験者数は約1,800人で、平均合格率32.8%を元に計算すると約590人が合格していることになります。
USCPAの試験を4科目一発で合格する割合は公表されていません。
ただし、年によって変化しますが、全科目の日本人受験者の平均合格率が30%前半であるのに対し、最も低いAUDの合格率が30%を割り込んでいますので、一発合格者の割合は少なくとも30%以下であると考えられるでしょう。
尚、一発合格者の数は少ないものの、その数はそれなりに存在するとも考えられます。特に日本の公認会計士や税理士、企業の財務・経理部などで実務経験のある方や簿記試験などにパスしたり、大学で会計学を勉強していて会計知識の豊富な学生などが受験する場合、かなりの確率で一発合格していると考えられます。
ただし、その他の多くの受験生は、働きながら受験するために4科目同時に合格している比率は下がるでしょう。
USCPAの試験はテストのボリュームは日本の公認会計士よりも少ないものの、かなりのボリュームがあり、出題範囲も非常に広範囲にわたります。
また、その公認会計士よりも難易度は低いものの、実務レベルの問題が多く出題されますので、特にAudit(AUD、監査および諸手続き)を中心に実務経験がないとイメージしづらいような難易度の高い問題もあります。
勉強方法については、いかに主要な論点について効率良く、網羅的に学習できるかがカギとなります。
また、単なる知識の丸暗記だけでは合格するのは難しく、一つ一つの知識を関連付けてしっかりと理解しながら習得していくような勉強方法が望まれます。2017年4月以降の新試験では、試験の傾向が変わり、それまで以上に高度な分析力や評価スキルが必要とされる問題になってきています。
USCPA試験に関する情報が少なかった時代はWiley(ワイリー)と呼ばれる過去問を編集して作成されているアメリカの有名な参考書だけで勉強されていた時代もありました。
しかし、過去問が公表されなくなるとともに試験の難易度も徐々に上昇し、また試験の傾向自体が変わってきている昨今では、試験対策のノウハウが豊富な予備校のカリキュラムに沿った学習が最も合格に近い方法となっています。
高い分析能力が問われるようになったとはいえ、ひっかけ問題や重箱の隅をつつくような細かい知識が問われる問題はありません。
従って、日本国内の実績のある予備校の講義を受けながら、同時に配布される参考書や問題集で様々な論点について横断的に結びつけながら、各科目の傾向と対策に沿ってしっかりと学習していくことが重要です。
米国公認会計士(USCPA)の試験について、合格率や合格者数、試験の傾向といった切り口で様々な情報についてお伝えしてきました。
受験を検討している方は是非参考にしてみてください。